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Wed.

誕生日の秘密


「お父様,今日は何の集まりなのですか?」

まだ年の端もいかない幼い少女が尋ねた。

すると、温和そうな顔の父は少し何時もの顔を崩してこう言った。

「今日はパパのパパの誕生日なんだ。
 つまりおじいちゃんの誕生日さ。
 だからみんな集まるんだよ。」

父親はたしかにそう答えた。
この父親は仕事柄、普段はかしこまった口調でしか話をしないが、親子水入らずの時間だけは口調も崩した。

少女は知ってる。
パパはテレビに映るくらいとてつもなく有名人なんだってことを、そして親戚揃って有名人だってことも。
少女自身だってテレビに映らなきゃいけないことがいけなくこともあるくらいだから。

でも、少女は口調を変えられない。
かしこまった口調しか教育されなかったからだ。

少女は残念そうにこう呟いた。

「クリスマスのお集まりかと思いましたのに…。」

父親はこう答えた。

「名目上はそうなっているんだよ。
 だから内緒だよ?」

父親の口癖は『内緒だよ?』だ。
悪いことをしているのではない、でも国が許さないのだ。

少女は父の諭すような話し方が好きで、首を縦に振ったがそれでも不思議そうに尋ねた。

「『めいもくじょう』ってなんですか?
 それにお爺様の誕生日は昨日ですよ?
 だから昨日はお休みだったじゃないですか!」

父親は苦笑して答えた。

「やれやれ、知りたがりだな。
 いいかい? クリスマスってのはイエス=キリストの誕生日なんだ。
 キリスト教の偉い人さ。
 でもウチの国は基本が神道なんだよ。いろんな神様がいるって考え方だ。
 でもキリスト教はキリストが一番偉くて、あとはみんな平等なんだよ。
 昔はそれが嫌で迫害していた過去があるくらいだから、おじいちゃんとキリストが一緒の誕生日ってのは不味いんだよ。
      ....
 だから昔のほんとの偉い人がキリストより先の日に生まれたってことにして23日を誕生日にしたんだ。
 …昔の人は小さなことで優越感に浸りたかったんだろうな。」

最後は自分たちの境遇を自虐的に揶揄するように呟いた。
そんなこと気付かずに少女は思ったことを口にする。

「お話が難しくてよく分かりません…。
 でも今日がお爺様の誕生日なんですね!」
子どもは素直だな、なんて思いながら父親は頷いた。

ウチの一族は自由もなく象徴という形で縛られた生活を余儀なくされている。
思ったことを口にすることも許されていない。
そんな訳で『内緒』が多いのは子どもにはよくないとは思うが口癖みたいになってしまっている…。
ほんとにすまないとは思うが、半ば仕方がないことだ。
俺だって生まれた時からこんな生活をしていたので馴れたかと聞かれたら、馴れたと言うだろう。
けれども…

「…ぅ…ま
 ぉと…さ…
 お父様?
 険しいお顔をなさってどうされたのですか?」

父親は何度も呼ぶ少女の声に、ふと我に帰った。
そして、思い出したように言った。

「悪い。いつの間にか考え込んでいたようだ。
 そういえば、今日はママも来るぞ。」

「ほんとに!?
 今日は『こうむ』じゃない?」

少女はやっと年相応のあどけない笑顔を見せた。

「ああ、今日は静養中の所をわざわざ出てくるんだよ。
 精一杯甘えていいんだぞ。」

そうだ、今日は妻も誕生日パーティーに呼ばれて来る。
ウチの家系に嫁いで来たばっかりに、縛られた生活で精神的にやられてしまったようだ。
見舞いの1つも取材人が付きまとうのでろくに出来やしないが今日はお忍びだから、久しぶりにゆっくり話が出来るだろう。

車は音もなく静かに止まる。

そこで彼はまた我に帰る。
嗚呼、また自分の世界に入ってしまった。
どうやら、思ったことを口に出来ないと1人で考える時間が増えるようだ…。

そんなことを父親は考え、どうやら目的地に着いたようだと少女を促し車から降りる。

この扉を開けたら、みんなが待っている。
「さあ行こう、愛子。」



描きたかったことを描きました.
公開はしているけど,後悔はしてない←

テ-マは『マリオネット』
ジャンル的には現代ホラ-にしたかったけど断念.
有りそうでない現実味を持たせてみました.

環境に苦しむが懸命にもがく姿を,
巨大な国家機密と権力に抗う姿を,
教育の僕になりつつある子どもを.

ほんとは母親は,精神的にやられてしまった父親のストレスの捌け口になった予定でした.
それだと別の問題も絡んでくるし,短編にならないので辞めました.
なにより,少女を笑わせたかったから.

少女の名前を最後まで出さずにじわじわヒントにしたかったので,ぼかした描写しか出来なかったのがもどかしかった.
結局,何が描きたいかゴチャゴチャになってしまった.
なにより最後に衝撃を持っていけなかった.

『愛子』で気付けますよね?

よかったら感想なんて下されば幸いかと存じます.
                         H20.12.24 wakisak.
21:23 | 雑談 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
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